ツナサンド定食

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【結構ネタバレ】「風立ちぬ」を観てきました

先週、宮崎駿監督の最新作「風立ちぬ」 を観てきました。

 


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零戦の設計者・堀越二郎の半生を、宮崎監督が連載していた漫画や堀辰雄の同名小説を原作とした映画です。

 

世界観

僕はかなり好みですが、「ポニョ」を期待してきた子供が飽きて走り回ったという話も聞くように、確かに世界史がわからない子供はつまらんかも。

関東大震災世界恐慌があって、列強が台頭し、満州国を建国・第二次世界大戦の波が押し寄せてくるとともに日本は太平洋戦争へと突入して行く。その背景を知っているのと知らないのとではまるで違い、知っていないと楽しめないのではないかと思います。

逆に高校などでこのような背景をさらっておいた人には、感慨深いものがあるのではないでしょうか。

その上この時代特有の「きな臭さ」や、戦争へと向かっていく「暗さ」を出しすぎることなく、人間・堀越二郎を描くことに集中できているような印象です。

あとは、やっぱり監督は飛行機が好きなんだなともw

 

ストーリーと構成について

もうすこし本格的に技術の仕事をしているところが見たかったかな? とも思いました。

技術者だから、本庄さんあたりが主人公のことを最初は認めてなかったけども(いけすかなかったけど)成果物をみただけで認め出すとか助けるとか。

しかし本庄さん、最初から最後まで良いやつだったのが物足りなかったような気がしないまでもない。
しかしそれをやるとバランスが崩れるし、メッセージ性とか、映画全体のテイストが崩れるかもしれない。

 

これらはエンタメに良くありがちな手法だけど、これはそうじゃない。伝記映画であり、彼の志、思いを描く映画だから、これでいいのかなとも思う。

エンタメではないぽいのでたしかにポニョを期待してみにきた子供は退屈するだろうが、大人がみると気持ちのいい映画ですかね。特に20代。

 

そういえば墜落シーン?

ちょこちょこ前段階で設計していた飛行機が墜落するシーンがあったように記憶しているけど、堀越の不安感を示しているように見えて共感できた。

ゲームを作っていても、「スキルが足りなくてできなかったらどうしよう」とか「このままバグが取れなかったらどうしよう」とか、そうした不安はあるし、ましてパイロットの人命を左右する飛行機。パラシュートが開かなかったらとか、木っ端微塵になったらとか、機関銃で撃たれたときに設計でなんとかできるところなのにどうにもできなくでパラシュートを開く間もないほどすぐに爆発したらとか、テスト飛行では気が気でないだろう。そんな不安感を表しているような気がした。

ただ、奥さんと出会う保養地の前のシーン以外にあったかどうかちょっとうろ覚えなので、記憶違い&思い過ごしかもしれないです(ぇー

 

テーマ

観た後でこの映画を総括し、どんな映画だったか思い返してみると、九試単座戦闘機が無事に飛んで速度もクリアし周りが喜んでいるときに、主人公だけが何もないところをみて憂いのある表情を浮かべているのが気になっていました。

これから飛行機の使われ方や、パイロットの命を背負うことに対しての憂い、ということなのだろうか?

自分で設計した飛行機に乗ったパイロットも飛行機で爆撃した街に住んでいた人も死んだ。

 

この時代ですから当然、堀越二郎は爆撃機の設計をするわけです。

自分の美学や上からの司令を守りながら「美しい飛行機」を設計しても、結局それは人殺しの道具にしか使われない。

それは設計者の思想や考え方とはまったく関係のないもので、純粋に技術や設計が好きで人なんか殺したくなかろうが、逆に「これで鬼畜米英を殲滅してやる」みたいに息巻いていようが、人の命を奪うために使われるのには変わらない。

 

技術者は純粋な人が多いですが、自分の成果物の使われ方に対し、えも言われぬ感情を抱いていたであろうことは想像できます。

しかしヒロインの奥さんが全身で伝えてくれます。「生きてほしい」と。

 

僕の友人のように、よく病弱なヒロインとかそのヒロインが死ぬとかは「使い古された手」として嫌う人もいますが、この作品については彼女を死なせる必要があったと思います。

この作品では彼女のように全身で許してくれる存在が必要で、命をかけてそれをしてくれたのが、ヒロインである奥さん。

 

プロジェクトXのような技術者の話でも、ラブストーリーというわけでもなく、「赦しの話」という印象が強かったかなぁ。

 

 

観たあとの印象

観ている最中は「紅の豚」のようなかっこ良さを感じましたが、「豚」よりも青臭くて、人間臭いけど、親しみが持てる映画でした。

「豚」は「かっけえええええ」と熱くなるものだったけど、こちらは心にしんみりしみるような感じがするというか。

自分で設計した飛行機に乗ったパイロットも、飛行機で爆撃した街に住んでいた人も死んだ。責任と言うか、えも言われぬ感情を抱いていたけれども、ヒロインである奥さんが全身で伝えてくれる。「生きてほしい」と伝える。

キミは生きててもいいのだ、と優しく赦してくれているような印象を受けました。

 

それからこれは特に冒頭ですが、主人公のあこがれの人・カプローニさんの言葉が宮崎監督自身の言葉のように聞こえてきました。

「『風立ちぬ』はクリエイターからの評判が高い」という感想をどこかで見かけましたが、なにかを作っている人には特に響くであろう言葉がカプローニさんから発せられ、まるで彼を通して宮崎監督から自分に向けてそう言われているような感覚があるためではないかなと思います。